八幡平市博物館と
漆の今昔
八幡平市博物館は、1998年に安代町ふるさと資料館として開館した後、2005年に西根町・松尾村・安代町の3町村の合併を機に、八幡平市博物館として生まれ変わりました。
常設展では、主に八幡平市内の遺跡から出土した縄文土器などの資料から、木地制作と漆塗りの工程、使用する道具、地域の特色ある漆器を展示。他にも、地域で使われてきた農民具なども数多く展示され、安比川流域で脈々と受け継がれてきた漆文化の歴史や背景、その魅力を紹介しています。
この地域には、太古から漆の木が生育していました。いつから漆の産地になったのかは不明ですが、安比川流域で見つかった縄文遺跡からは、赤い漆が付いた石刀や漆の装飾が施された鉢が住居跡から発掘されています(鉢のみ八幡平市博物館に展示)。鉢の内外には赤褐色の付着物があり、この付着物が「漆膜」であるとの鑑定結果が出ていることから、漆を貯蔵する容器であったと考えられています。
漆は器の装飾や美しい漆器の塗料としてだけではなく、仏像や建物に装飾する際の接着材の役割も持ち、多くの神社やお寺に使われてきました。また、漆の実は、蝋燭の原料として用いられていました。
戦後は生活様式の変化などで、一時生産が途絶えてしまったこともありましたが、地域の人たちの努力で復活し、現代まで受け継がれてきました。
安比川流域が漆の一大産地となった歴史や背景を辿ってみましょう。
写真提供:八幡平市