木地椀や漆器が
往来した市日

「市日」とは市のたつ日のことで、「まちの日」とも呼ばれていました。市日の始まりは不明ですが、地元の農家が新鮮な野菜などの生産物を持ち寄り、八戸からは魚介類や海産物などを売る商人も多くやって来る大切な交易の場となっていました。多い時には呉服屋、果物屋、金物屋、魚屋など80軒ほどが軒を連ね、町に賑わいをもたらしたと言われています。

特に、安比川流域で生産された木地椀や漆器の取引には欠かすことのできない日。塗師は市日で安比川上流の木地師から漆を塗る前の白木の木地になる木地を買い、下流域の漆掻きから漆を仕入れ、仕上がった漆器を漆器商に売っていたからです。

塗師と木地師との木地の取引は「宿」と呼ばれる商店や個人宅で行われ、台所で酒を飲みながら取引をしたという記録が残っています。木地師、塗師、そして漆器商が一堂に会し、仲間同士で酒を酌み交わす。これは、普段は単独で仕事をすることが多い職人たちにとって、情報交換を行う貴重な場でもありました。

市日は現在にも引き継がれ、二戸市浄法寺町では毎月2のつく日、八幡平市の荒屋新町駅前では毎月4のつく日に開かれ、規模は大分小さくなりましたが、朝からお昼まで開催され、野菜や種苗、衣類などが売られ、地元の人たちの生活に根ざしています。

撮影:奥山淳志
写真提供:八幡平市、二戸市

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