後継者を育てる八幡平市安代漆工技術研究センターと安比塗漆器工房
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漆器生産地として名を馳せた北東北一帯には、古くから漆の木が多く自生し、日本有数の漆の産地として上質な漆や漆器がつくられてきました。安比川上流で伐採された木々は、川を降って畑地区で器に成形され、荒沢地区に住む職人によって浄法寺で採取された漆が塗られました。それらは「荒沢漆器」と呼ばれ、明治時代には隆盛を誇り、漆器生産に携わる人が約500名もいたと言われています。しかし、昭和に入り漆器産業は衰退。職人が減少していくなか、1983年に荒沢漆器の伝統を後世へ伝えるために開設されたのが、「安代町漆器センター(現・八幡平市安代漆工技術研究センター)」です。
ここでは、2年間の研修期間で木地制作から下地、漆精製、塗り、加飾など漆工に関する実践的な指導を行い、塗師を育成。多くの塗師を全国に輩出してきました。若き担い手を育むアカデミーとして希有な機関であり、理論的かつ実践的な指導法とその教育水準が高く評価されています。
1999年には、八幡平市安代漆工技術研究センターと連携し、卒業生を受け入れるための「安比塗漆器工房」が開設。確かな技術を持った塗師たちが、日々技術の研鑽に励んでいます。ここでは、安比塗の伝統を復興、継承するとともに、現代の生活に合った器を新たに生み出し、温もりと丈夫さを併せ持つ漆器だけを安比塗と称し、漆器生産から販売、アフターケアまでを行い、八幡平市安代地区の漆器生産の中心的な役割を担っています。
撮影:奥山淳志
写真提供:八幡平市