稲庭岳から見る
木地づくり

二戸市の北西に位置し、山頂から岩手山や七時雨山、八甲田連邦を一望できる稲庭岳。山裾にはブナやトチ、ダケカンバなどの原生林が広がり、清らかな沢水が山肌を縫って安比川へと注いでいます。この辺りは昔、ロクロを使って木の椀などをつくっていた木地師たちが良木を求めて分け入った緑豊かな森。彼らは安比川の流域を移動しながら、木地づくりを行っていました。

丸太から木地にするまでの工程は、「荒型づくり」と仕上げの「木地挽き」のふたつに大きく分けられます。

「荒型」は「荒木地」とも呼び、丸太を割り、おおよその器の形にした木の塊のこと。「荒型づくり」は、立木の伐採から始まります。そこから丸太を製造し、木取りをした上で、荒型を削り出します。次に行う「木地挽き」では、乾燥させた荒型をロクロに固定して回転させ、鉋を当てて削り、皿や椀に成形します。ロクロには、古くから使われてきた「手挽きロクロ」と、近代になって使われるようになった「水車式ロクロ」、その後導入された「機械式ロクロ」等の種類があり、後者ほど一度に大量の木地を生産することが出来るようになりました。

ロクロのなかには、最低でも5、6年の修行が必要と言われているものもありました。「木地挽き」は、木地製品の形や部位によって、10種類以上の大小さまざまな形の鉋を使い分けます。繊細な鉋の形状の違いは、手先にその感覚が染み付いている木地師のみが知るところ。棒状の鋼を用いて木地師自ら鍛冶を打ち、多くの種類の鉋を成形したそうです。木地師には、荒型の成形技術だけでなく、鍛冶屋の技術も必要だったのです。

写真提供:二戸市

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