現代の浄法寺塗を見る
滴生舎
浄法寺漆の歴史を繋いでいく発信拠点として、1995年に浄法寺漆の産地である二戸市浄法寺町にオープンした滴生舎。木地師や塗師を育てながら、地元で採れた漆のみを使い、塗りと研ぎを幾度となく繰り返すとことで用の美と堅牢さをまとう漆器製作の伝統を守り続けています。
滴生舎は展示販売を行うショールームと漆器製作工房からなり、すべて浄法寺漆で仕上げた漆器の製作と販売を中心に、浄法寺漆を使う作家の作品も販売。漆器一つひとつを実際に手に取れるほか、漆器の使い方や制作工程を教わりながら、ガラス越しに塗師の仕事を見ることができます。
現在、二戸市浄法寺町と八幡平市安代地区で生産している漆器はそれぞれ「浄法寺塗」「安比塗」と呼ばれていますが、ふたつの地域に流れる安比川流域では、昔から地域一体となって漆器生産を行なってきた歴史があり、かつては「浄法寺椀」や「南部椀」「荒沢漆器」など、さまざまな呼称で呼ばれていました。
ところが、戦後になるとプラスチック製品や陶磁器の普及、価格の安い輸入漆の増加によって漆器生産は衰退。それから20年近くを経て、もう一度漆器文化を復活させようと地元の漆掻き職人や塗師が立ち上がり、地域の伝統を生かしながら現代の生活に合った実用的でシンプルなデザインの漆器として生まれ変わりました。
優しい口当たりや、使うごとに艶を増し、修理や塗り直しをしながら世代を超えて使い続けられる浄法寺塗。持続可能な社会を目指す現代の暮らしにフィットするものとしてその評価が高まっています。
写真提供:二戸市